<<このサイトについて>>
日本各地の学校で、外国につながる子ども達(外国人児童生徒)(注1)が学ぶようになり、日本語学習支援については、学校も家庭も、そして文部科学省もそ の重要性を認識し、支援体制が進みつつありますが、母語(継承語)(注2)については、その重要性について、あまり理解が深まっていません。
あるとき突然、日本語のわからない子ども達が、転入してくると、まず、日本語の学習が一番大きな課題になります。本人も周囲も、日本語習得の重要性は強く 認識しますが、時間が経つにつれて母語を失っていくということの意味や、場合によっては日本語も母語も十分に育っていない状況の中で学校の勉強についていけなくなったり、家族のコミュニケーションが希薄になったりすることが、あまり深く理解されないまま大きくなってしまうケースが多く見られます。
母語を活用して学習言語としての日本語の習得を容易にしたり、母語の習得によるアイデンティティの確立、親や祖父母とのコミュニケーション、そして将来の人 生の選択肢を広げるなど、母語を維持・育成するメリットは沢山あります。日本語習得だけでなく、母語の維持・育成も外国につながる子ども達にとっては重要な取 り組みな のです。
また、幼いころ、あるいは親やその上の世代に日本にやってきて、日本語を流暢に操るように見える子どもたちにとっても、母語の育成は大切な課題です。
また、日本社会にとっても、バイリンガルの人材を育てることは重要な意味があると考えます。
そこで、本サイトでは、外国につながる子ども達がもつ母語の大切さや、母語を維持・育成するための具体的な取り組みについて情報発信していきます。学校の 先生、両親、外国人支援NPOなど、外国人児童生徒や外国につながる子ども達の学習支援に携わる皆さんに役に立つように、母語教育の観点から情報提供し、 ネットワーク作りを促進することを目指します。
外国につながる子ども達は、3000校あまりの公立学校に1〜2人だったり、かなりの集団であったりしますが、全国の学校のあちこちに在籍しています。ですからなおのこと、このような子ども達の在籍する学校同士の情報交換が必要になってきます。
また、母語の意義や習得、母語への気持ちは、家庭の状況や一人一人の来日時の年齢や状況などによって、さまざまです。また育って いく過程において も、変化していきます。一つの答えがあるわけではないですが、このサイトでは、母語を失うことの意味や、母語を育てることについて考え、情報交流をめざします。
注1:本サイトでは、外国につながる子ども達および外国人児童生徒という用語を主に使用していますが、母語・継承語の習得に関心のある多様な人たちを対象としたいと考えています。
例えば、次のような人たちも含まれます:
国籍が日本でも、親や祖父母が外国につながる人たち
国籍が日本以外でも日本で生まれたり育ったりした人たち
日本人でも海外に移住することで母語維持について考える人たち
日本手話を母語とするろう者たち
注2: 大部分の日本人にとって日本語は、「母語」であり、自分の国で使用されている「母国語」です。しかし、世界では、母語と母国語は一致しない人々の方が多い ので注意が必要です。「継承語」ということばも広く使われていますが、本サイトでは、継承語という概念も含めて、「母語」という用語を使うこととします。