■これまでの国際理解教育での取り組み
小学校や中学校で主に取り組まれている国際理解教育では、子どもたちに1. 異文化を理解し、これを尊重・共生できる資質・能力、2. 自己の確立、3. コミュニケーション能力、という3点を主に育成することが期待されていました(文科省、平成8年7月 第15期中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」)。そこで総合的な学習の時間などを利用して、異文化理解や外国語学習、国際交流に取り組んできたのです。たとえば、小学校に留学生を招いて母国の料理講習会を開催したり、民族衣装や故郷の祭りを紹介してもらったりしてきました。しかし、それは3F,つまりFood(食糧)Fashion(民族衣装) Festival(祭り)の単発的な紹介で終わってしまうという問題もありました。国際理解教育といっても他の国や文化のことを知識として理解することや他の国や文化の人と一時的に出会って交流するだけにとどまっていたのです。つまり人との「繋がり」や具体的な課題(社会問題)解決を念頭に必ずしも交流したわけではないので、継続するのが難しかったのです。
■国際教育
文科省は、「国際教育」という用語を使って「国際社会において、地球的視野に立って、主体的に行動するために必要と考えられる態度・能力の基礎を育成するための教育」として位置付け、1.異文化や異なる文化を持つ人々を受容し、「つながる」ことのできる力、 2.自らの国の伝統・文化に根差した自己の確立、 3.自ら発信し行動することのできる力、の3点を推し進めることにしました(初等中等教育における国際教育推進検討会報告(素案)。たとえば、小学校に留学生を招いて交流会をしたら、それを契機に留学生が置かれている状況を理解したり、その話を受けて自分たちの生活習慣を見直したりするなど留学生とまたは留学生と共有した課題について継続的に関わることで見えてくる地球規模の課題に取り組めるような態度を育成することを重視しようというものです。
その意味で国際理解教育または国際教育は、異文化理解、外国語学習、国際交流のほかに「在住外国人との共生」「環境・人権・平和教育」「貧困や南北問題」などにもテーマを広げて推し進められるべき教育ともいえるでしょう。
その意味で国際理解教育または国際教育は、異文化理解、外国語学習、国際交流のほかに「在住外国人との共生」「環境・人権・平和教育」「貧困や南北問題」などにもテーマを広げて推し進められるべき教育ともいえるでしょう。
■少数点在する多文化な子どもたち
平成22年度の文部科学省の調査結果によると公立学校に在籍している外国人児童生徒数は、74,214人にもなります。ただし外国籍だからといって皆が「日本語指導が必要な外国人児童生徒」というわけではありません。「日本語指導が必要な外国人児童生徒」とは「日本語で日常会話が十分にできない児童生徒」や「日常会話ができても、学年相当の学習言語が不足し、学習活動への参加に支障が生じており、日本語指導が必要な児童生徒」をさしますが、日本語指導が必要か否かは、子どもの置かれた状況によるので必ずしも子どもの国籍や出身地からだけでは判断できません。現に、調査によると日本国籍を有する者でも、日本語指導が必要な児童生徒は、5,496人いることが分かっています。
日本の公立の小学校、高等学校、中等教育学校、および特別支援学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒は、平成22年度の統計をみると外国人児童生徒の総数74,214人のうち28,511人です。学校種別にみると小学校(3831校)に18,365人、 中学校(2157校)に8,012 人、高等学校(367校)に1,980 人、中等教育学校(1校)に22人、特別支援学校(67校)に132人、在籍しています。さらに、日本語指導が必要な児童生徒は、ある地域の学校に集中しているだけではなく、8割が全国的、地域的に散在しています。つまり日本語指導が必要な児童生徒が一人いる公立学校が2827校(全公立学校の44%)、二人いる公立学校が1186校と、少ない人数であちらこちらの学校に在籍しているので、母語支援の対応が難しいのです。
日本の公立の小学校、高等学校、中等教育学校、および特別支援学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒は、平成22年度の統計をみると外国人児童生徒の総数74,214人のうち28,511人です。学校種別にみると小学校(3831校)に18,365人、 中学校(2157校)に8,012 人、高等学校(367校)に1,980 人、中等教育学校(1校)に22人、特別支援学校(67校)に132人、在籍しています。さらに、日本語指導が必要な児童生徒は、ある地域の学校に集中しているだけではなく、8割が全国的、地域的に散在しています。つまり日本語指導が必要な児童生徒が一人いる公立学校が2827校(全公立学校の44%)、二人いる公立学校が1186校と、少ない人数であちらこちらの学校に在籍しているので、母語支援の対応が難しいのです。